DREAM!ing-Rainy Days- 衣装展示を見に行きました

 

 

 2023年1月。ミュージカルDREAM!ing第二弾、    Rainy Daysの衣装展示がタワーレコード渋谷店にて開催された。舞台のBlu-ray発売に合わせたこのイベントに、ファンは沸き立ち、喜びの声が溢れた。限られた日程の中、幸いにも訪れることができたので、その様子を書き留めておこうと思う。

 

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 渋谷、それはドリーミングの聖地。作品の舞台であり、ゲーム画面の背景であり、数々の出来事、例えば望月悠馬がシルバーカーの詐欺に遭い、巳影と凛太朗が闘いを繰り広げた現場である。

 また多くのリアルイベントが開催された場所だ。ホワイトデーカフェ、ハンズコラボ、ゆめライブステーション、ドリ生公開収録、ドリフル。Dミュグラッテ。カラ鉄。思い出は尽きることはない。

 というかドリミ以外に渋谷の思い出が無いな等考えながら、タワーレコード渋谷店に着いた。キョロキョロと店内を見回し、エスカレーターを探す。

 

 早速展示が行われている2階へ向かう。エスカレーターを降りてすぐの場所に、彼らは居た。

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うおおおお!!!ゆめライブ衣装が!!!!本物!!中の人が腕を通した本物!!

 

以下、展示されていた衣装の個人的な感想である。(妄想も含みます)

 

《柴咲真也》

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 スナップ!!!上着がスナップ留め!!!解釈完全一致に悶える。スナップをパッチンする真也くん最高すぎる。ちょっとウェスト絞られててかっこいい。また靴が擦れており、真也くん大変だったもんね…と劇中の感動を思い出し涙を誘う。この靴が真也くんを支えたのだ。ところで第一ボタンを外した黒いシャツに真也くんの魅力が詰まっているといつも思います。

 

《白華時雨》

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 時雨はホックなんですよ〜〜〜スチャッとスマートにホックをはめる白華時雨解釈一致すぎる。あの手袋で?ホックを?はめてる???手袋を口に咥えているかもしれないな。無理だ。純白のタイ、所々黒が差す衣装に時雨の複雑な生い立ちや感情、本来持っている純粋さを感じて胸がギュッとする。靴の白と黒のコントラスト素晴らしい!!!靴売って!!

 

《浅霧巳影》

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 巳影もスナップでした、原作2部主人公コンビはスナップだね。巳影は手元を見ずに留めるのだろう。解釈一致ですありがとうございます。眼鏡がセットで展示されていて、こんなに近くで見て良いの…あっ本当にレンズない…となりました。マントのヒラヒラもさることながら壁を喜ばせるためだけに存在する肩ベルトが最高でした。この衣装でミュージカルナンバー見せてください。

 

《虎澤一生》

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 一生はマジックテープ+スナップ?なんだよ〜〜〜そりゃ衣装の構造的にそうでしょうけど!!こんなに解釈一致のことがあるでしょうか。豪華な肩の装飾は、フランス近衛隊にも銀河帝国軍にも引けを取らない。赤い布の光沢が寮長の存在感をさらに引き立てていました。この衣装が100のリストを並走していたのだと思うと舞台のあの瞬間に戻るような気持ちになります。

 

《望月悠馬》

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 青い〜〜!!綺麗で深い青色。凪いだ静かな海の色であり、あの約束の夜の空の色でもある。ベルベット調の青い布地に細やかな金の刺繍、さらに金具が取り付けられており、立体感に溢れている。肩の装飾は花房柳と対の位置であり、圧倒的ペア感だ。この衣装は原作アプリの「叛逆のシュヴァリエ」から採用されているのだが、悠馬が剣で颯爽と戦っていて本当に感動しました。中の人に青が抜群に似合う!

 

《花房柳》 

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さっさとここを片付けてミルクで乾杯して!柳!!!(キティ失礼)

 あまりにも好きすぎるため、全ての感想は消失した。存在に感謝。この世界に感謝。私は本当にドリーミングに出会えて良かった。布地を織ってくださった機械、デザイナー様パタンナー様、縫製してくださった方、ミシン?針?あと何?材料の生産地?染色?とにかく関わってくださった方に感謝を捧げている。ついでに花房柳推しを狂わす二大衣装のもう一つ、アイロニーガーデンもいつか見せて下さい。

 

《針宮藤次》

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 なんか見覚えあるカードの衣装でステッキをマイクに歌ってる〜〜〜!!という舞台初見の衝撃は忘れられない。首元の上品なスカーフ(?)、金のボタンが藤次の誠実で優しい騎士の気質を際立たせている。黒地には紋様が施されており、金の装飾は原作に忠実、見つめているだけで数時間経過する。紫音のシャツと同じ布なの最高。このようなペアを感じさせる演出、作品への愛情、いつも感謝しています。

 

三毛門紫音》

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大きなリボン、王冠のピン、ふんわりパニエにミニスカート、ダイヤ模様の入った白のロングブーツ。揺れる動きまで計算に入っている。これほど三毛門紫音のバトル衣装として最適解があるだろうか。そしてこの衣装を着こなして、演じられる唯一無二の役者がいる。舞台というものはさまざまな奇跡が重なって出来ているのだと改めて思いを馳せる。シャツやパニエのチラ見せありがとうございます。ボタン一つ一つまで丁寧な装飾でした!

 

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 実際の衣装から、色々な感情を呼び起こされた展示であった。オンラインで様々なことが体験できる昨今だが、実物からしか得られないものも確かにあるのだ。

 今回の衣装展示は東京のみ、限られた期間であったので、足を運ぶことができなかった人も多いであろう。お目見えしていない衣装もある。一刻も早く全国で展示すべきだ。

 孝臣の紫のパーカ、千里のブロックシャツが並んで展示される際、イクリプスを流したいと思うこともあるだろう。CDの発売が急務だ。幽の腰に巻かれた多数の紐もこの目で確認しなければならないし、湊の長身に映える黒いボレロを見上げ、マントの長さに溜息をつくことも必須だ。

 そして由仁の衣装が展示された暁には、私は自撮り棒的な物であらゆる角度から撮影を試みるだろう。いや待て、迷惑になるからダメだ。代案を考えます、迷惑はかけないので、由仁の衣装展示してください。黒寮祭りを開催してください。全国どこへでも馳せ参じます。

 

 久しぶりのリアルイベントに、心が躍り湧き立った二週間だった。新たな特典(茶封筒を自分で引くシステム!)も手に入れ、まだこの世界には新しいドリーミングの何かが生まれているという、他からは決して得られない幸せも改めて体感した。ミュージカル第三弾の発表が待ち遠しい。

 

 私はドリミの原作が大好きだけれど、いつの間にか、同じくらい舞台も大好きになっている。アプリの文章から感じること、生身の人間が演じることで伝わってくること。どちらもかけがえの無い、ドリーミングなのだ。願わくば、あと3人の特進生も舞台で見てみたい。黒の寮長副寮長ペアのゆめライブが見たいし、兄様しか目に入らないビアンキ由仁の瞳に、ペアの久磨凛太朗が写る姿がどうしても見たいのだ。

 

 今は発表を待ちつつ、衣装展示の余韻に浸りながら、発売されたばかりのBlu-rayを楽しんでいよう。まだまだ不安な時勢が続き、どうなるのかわからない毎日の中で、ドリーミングがあるということは、本当に心の支えだ。舞台第三弾、全国衣装展示、アプリ五周年に備えて、健康と財力を維持できるように、日々頑張って生きていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランケットにくるまって、DREAM!ing2部を読み返そう

 

 10月下旬、DREAM!ing4周年記念商品として、DREAM!ing Memorial Bookのデジタルアーカイブ版DLカードが我が家に届いた。イラストが印刷された4枚のブランケットと3枚のアクリルパネルが同梱された限定版を購入したので、突然の過剰供給に、ブランケット4枚だけど体は一つ〜こんなに板飾りきれない〜>_<と嬉しい悲鳴をあげている。

 さてDREAM!ingといえば大好評を博したミュージカル第二弾、Rainy Daysの円盤発売待ちである。公演が終わってから数ヶ月経ったのに、まだ発売まで数ヶ月あるという信じられない状況が続いている。

 しかし、2023年1月25日以降は、常にRDの円盤があり人生が満たされてしまうことを考えると、今のこの期間、限られた時間を楽しむのも悪くない。

  幸い、手元にはこの時期にピッタリのブランケットがある。早速バリバリと開封し、腰に巻いてみた。壁Tシャツは自身が壁と一体化したが、今回は柔らかい触り心地と美麗なキャラクターに包まれ、なんとも温かい気持ちになる。正直ドリミがアニメ化しないこの世界なんてやっていられないのだが、そんなやさぐれた心に優しく寄り添ってくれているかのようだ。

 それぞれの表情を浮かべる、2部の主人公たち。そういえば2部しばらく読んでないな。ミュージカル見た後に見返すと、新しい発見があるかもーーーーーーそう思い、アプリの再生ボタンに手を伸ばした。

 

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 まず新しい発見といえば、私がミュージカルの詳細を忘れているということが判明した。マジ脳細胞が息してない。冒頭、27clubを調査しに来た時雨、孝臣、藤次が仮面の男と遭遇し、指パッチンで床が抜けるという場面、エッッ舞台ではどうしてた!?どうやって落ちた!?としばらく考え込んでいた(おそらく普通にはけたし、たぶん床抜けてない)。またミュージカルを見たことにより原作2部を忘れているため、千鶴が言った「数年の命」を時雨のセリフに転換し、出番を絞りつつキーワードに反応する一生を印象付ける脚本演出すご……と初見みたいな感想がわんさか出てくる。

 原作の展開を組み直し、交錯させ、地の文からもセリフや歌詞に引用しており舞台の記憶が呼び起こされる。1秒たりとも目が離せない。一生のゆめライブ、原作もキツい(自分でコントロールすれば良いって言ってるのに出来ないところみんなに見られてしまう…)のによくそれ以上にキッッツイ演出にしたなあ長々と(ありがとうございます)。巳影タピオカミルクティーっつってたのか。花びら飲んじゃって……ってセリフにしたの的確すぎる。一生も軽口叩かなくて済むし。叩けないし。

 また、一体何を食べたらシャンパンコールと心腹の対峙を舞台上で両立させることを思いつくのかと思っていたのだが、4章で時雨が幻想即興曲は決して交わることのない別のリズムを刻んでいるのに美しい旋律を奏でる、光と影のように、という話をしており、ああ、あの場面は幻想即興曲だったのだ……と天を仰いでいる。

 それにしても2部は良くできている。なんといってもW主人公のバランスが秀逸だ。感情の巳影、理論の真也である。一見逆であるところがまた良い。辛い境遇にある少年二人が、さらに辛い境遇にあるかけがえのないペア相手をズタボロになりながら救う物語など、ドリーミングでしか味わえない。4部を読んで、ミュージカルを見て戻ってきた2部、あまりにも感慨深い。やっていることは実ったよ、良かったね浅霧。良かったね真也くん。良かったね時雨、良かったね一生………。

 

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 ミュージカルの役者さんは原作に寄せているなと思っていたのだが、改めて聞くと声優さんの演技とはだいぶ違う。生徒会室を去る時雨の声が、記憶の100倍悲壮感に溢れていたことには驚いた。私に分かることは、ステージに合わせた表現があることと、どちらの時雨も彼の背負っている数奇な運命を感じさせる、素晴らしいものであるということだけだ。一方真也くんは立ち絵すら役者さんに見えてきてしまい、同化しすぎている。憑依型天才役者か。どういうことなの。

 おひ月ペアは、原作読んだ時に一体彼らはどんな顔でお互いの話を聞いていたんだろう…とずっと考えていたので、舞台上で生の役者さんを見ることができて本当に嬉しかった。東屋で、27clubのてっぺんで、相手の声に耳を傾けながら感情が見え隠れする彼らの表情を、私はずっと忘れない。

 ミュージカルは原作に忠実でありながらも、不要な部分はバッサリとカットし、展開に合わせて改変し(特進生バトルなんて原作より面白い)、洗練された舞台になっている。脚本演出の巧みさにうなるばかりだ。オタクなのですぐにお金を送りたくなってしまうのだが、そこは円盤を複数買うことで感謝を形にしようではないか。今からでも特典増やしてくれ。既存グッズに舞台写真つけて売ってくれ。塚本さんの写真くれ(私情)

 さて私の推しはビアンキ由仁くんである。なんと彼のセリフは大方採用されており、読みながら舞台を思い出しては笑みが止まらない。おひざすりむいたの〜!の元はひざこぞうすりむいたの〜!だったのか!(こういう記憶力はある)。バトルで出てくるビアンキ特製ヒミツ道具は、イベントストーリーから取り入れられ、メインストーリーでは2部から登場している。

 別に無くても支障ないところを、ミュージカルに登場したのは3部への布石だと思われる。飛び道具でしかなかったヒミツ道具は、3部でコミカルでありながら重要な秘密を引き出す一助となり、4部ではその光が深夜の病院の、暗い廊下を照らす存在になる。由仁はその存在が突飛であるほど、作品で重要な本質が際立つのだ。私はRDのOPで傘をクルクル回す由仁が大好きである。早く円盤で再び出会いたい。

 

 原作とコミカライズとミュージカルを行ったり来たりするだけでも新しい発見はまだまだある。ブランケットもまだあと3枚あるので、包まれながら円盤発売日を待とうと思う。

 

 

 

 

 

 

壁Tシャツを5日間着て過ごした壁の記録

 

 

 2022年夏。ミュージカル「DREAM!ing-Rainy Days-」の上演に合わせて、また原作アプリ4周年の記念として、公式から名言入りの壁Tシャツが発売された。私も5枚ほど買い求め、装着して観劇し、壁となり東雲学園の一般生となり、楽しい日々を過ごした。

 さて舞台も閉幕し、壁Tから少し距離を置いていたが、ふとお盆休みに連日着て過ごそうと思い立った。何か変化や刺激があるかもしれない。また、同居する夫や子にどんな影響があるのか。そして何より、ただただ私が壁Tを着て過ごしたい。以下はその記録である。

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1日目 望月悠馬「わっぜか……!」

 

 まず選んだのは悠馬。DREAM!ingは、望月悠馬の物語から始まる。幕開きに相応しい。悠馬のまっすぐな心に惹かれて、ひたむきな眼差しの先にある景色が見たくて、私はドリミに夢中になったのだ。

 着てみると驚くのが、壁も瞳も全て青で統一されたデザイン。彼の故郷、鹿児島の海と空を思わせる。いてもたってもいられず、自然とラジオ体操を始めてしまったほどだ。体が軽い。シャキシャキ動く。

 私事だが私の母が鹿児島県出身で、私が幼い頃は祖母と話す時だけ鹿児島弁を使っていたので不思議に思っていた。

「わっぜ」「じゃっどん」とよく言っており、鹿児島のことを「かごんま」と呼んでいたが、基本全然聞き取れなかった。……最後に母の鹿児島弁を聞いたのはいつだったろう。悠馬が麻里やおばあちゃんと鹿児島弁で話している場面で、微笑ましく思いながらも私はいつも少しだけ、心のどこかが切なくなる。

 ……なんと1日目からわっぜかセンチメンタルになってしまった。既に身体に影響が出ている。壁Tの効果はすごい。このままあと4日着続けたら、私はどうなってしまうのだろうか。 

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2日目 白華時雨「シチリアの血の海に溺れたいようだ」

 

 朝から時雨Tを着る。何度か着ているが、何故か夫は時雨Tの背中の文言をいたく気に入っており、「シチリアの血の海に……」と台詞を読み上げ、「誰を沈めるの?」などと聞いてくる。とても嬉しそうだ。

 夫は温厚な善人なのだが寡黙で未だによく分からないところがある。それが、この台詞にこんなに食い付くとは。多分、血の海に溺れたいという願望があるのだろう。壁Tが無ければ夫の闇の一面を知ることもなかった。ありがとうドリーミング。

 他にも時雨Tの大きな特徴は、左右の瞳の色が違うことだ。グレー地に浮かぶ、吸い込まれそうな鋭いグリーンの左目。芸術点が1億点のこのデザインを、どうして隠していられたのだろうか。

 普段外出時は量販店のUVカットパーカー的な物を羽織って隠匿しているのだが、この日イトーヨーカドーにて初めて壁を全開にした。そして堂々と胸を張る。

 すごい解放感!!店内にいる全ての人に私を見て欲しい。私の胸に宿る白華時雨の運命を知って欲しい。白華時雨といいます。優しい子です。白い華と書いて〜〜〜白華!!!!!!!

 ……時雨Tを着ている日は家庭円満で、私も普段よりも姿勢が良い。壁Tはどこまでも健康に良い。

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3日目 花房柳「痛い思いをしたい子だけ、おいで」

 

 まだ布地に張りがある、今回初めて着る柳T。背中の文面がどうも気になってしまい、着ることを躊躇っていた。というのも我が家には多感な年頃の子もおり、この文面をどう捉えるか少々不安があったのだ。

 しかし、もし何か、子に深読みしたことを言われたら。私には親として伝えるべきことがある。

 この言葉はイベントストーリー「やなぎH3やめるって」の終盤の発言である。花房柳という厭世観を抱えた面倒な男が、湊の温かさに救われ、悠馬に諭され、仁様に鼓舞されることよって自己肯定に至るという過程から生まれた名台詞だ。歓声と共にグンナイ⭐︎HONEYが流れた瞬間、私は確かにキティとしてあのライブ会場に存在していた。(僕の香り、嗅ぎたいーーー?も候補だったかも!?!?)

 あの臨場感は、イベストだけを読んでも伝わらない。百合や、悠馬の漫画の背景、二人の足跡を知る必要がある。つまり、私の言うべきことはこうだ。

「360Channelで、DREAM!ingフルボイス版メインストーリーを第一部から読むのですーーーーそして、僕等の六等星を聴くのですーーーーお前の母が、人生で一番聴いている曲ですーーーー」

 ところが準備万端なのに子からは何のリアクションも無い。周りをウロチョロしてみたのだが、どうやら文章云々ではなく、私の服に興味がないのだ。これは盲点だった。残念に思いつつ、ツッコミが入るその日まで着続け、いつでもプレゼント版をスタンバイしておこう。 

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4日目 ビアンキ由仁「ムキムキマッチョになるために筋トレ頑張るの!」

 

 関東地方に台風が直撃したこの日。外出できないこんな日も、壁Tのおかげで楽しく過ごしている。

 ところで、通常、私は由仁の壁として活動をしている。由仁を愛し、尊敬しているのだが、いざ自分が本物の壁になると、彼のことを何もわかっていないことに不安になる。父親に憧れ、大きく成長したい為にブカブカの制服を着ていることは判明したが、なぜズボンはあんなに短いのか。切ったのか。なぜ一人だけソックスガーターを付けているのか。なぜ4部であんな行動をとったのか……。

 ガーターを付けている理由はおそらく紳士の嗜みだから、と考えているが、自信がない。そもそも誰もガーターに言及せず、私にだけに見える幻覚なのかと不安が増すばかりだ。

 しかし同じ小道具仲間ーー浅霧巳影に注目しよう。彼は特進生唯一の眼鏡キャラだが、眼鏡について語られているところをあまり見かけない(1stアニバ本等では言及されている)。なぜなら、浅霧巳影は黄緑色の眼鏡をかけているーーーーそれが全て。この世の理なのだ。

 つまり、ビアンキ由仁も、ソックスガーターを装着しているーーーーそれ以上でも以下でもない。私はその事実を享受するのみ。

 ちなみに4部の由仁について、「波紋の音色で五線譜が伸びてく」というDミュRDの歌詞によって少し理解ができた気がしている。雨が降ったことによる人間関係の変化や成長が、由仁にも影響を及ぼしているのだ。

 壁Tを着ることで壁そのものとなり、思考が整理され、作品への理解が深まる。こんなグッズがあるだろうか。改めて発売に感謝している。

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5日目 猿渡喜一「君達はこれからこの東雲学園で、真の絆を得るんだ」

 

 いよいよ壁Tもフィナーレだ。最後を飾るのは喜一。喜一だけメンズサイズを買っており、普段より面積の広い壁にドギマギする。文面も、DREAM!ingの中でも特に好きな言葉だ。彼らは何もせずに真の絆を得た訳ではない。学園生活の中で、心の中を晒け出し、傷つけ合ったり格好悪いところを見せたり、言うまいと胸にしまっていた言葉を打ち明けて絆を深めていったのだ。

  私にとってなせドリーミングが特別なのか。最高の脚本、良いところも悪いところもある、個性豊かな魅力あるキャラクター。それらもあるのだが、一番は彼らの辛い経験、さまざまな感情に共感していることかもしれない。

 私が今まで抱えてきたたくさんの思いが、特進生たちが懸命に生きて、その先の人生を見せてくれることで、肯定されていく。遠く夜空に霞んだ六等星に姿を重ねた彼らのように、私はかつての自分の姿を彼らに重ねている。彼らの幸せが、私の幸せなのだ。

 ドリミに心動かされている人の数だけ、それぞれにドリミへの思いがあるのだろう。私はこの先の人生、ずっとドリーミングが好きだなと思う。

 物思いに耽っていると、夫が喜一の壁を見て血の海で溺れた人?と聞いてきて(何てことを)、ストーリーを繋げようとしてくる。更に何で検索すればそのシャツ出てくる?と質問してきた。5日間壁と暮らすと、コンテンツに興味を持ってもらえることが判明した。これは大きな研究結果ではないだろうか。

 また、非常に穏やかに過ごすことができた5日間だった。私は些細なことでよく怒ってしまうのだが、俯くと0.1秒で自分が壁であることを思い出し、まあそんなに怒ることないか、私壁だもんな、と、アンガーマネジメントに大いに役に立った。壁Tすごくないですか。1枚3480円です。

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 楽しい5日間が終わり、私もまたいつもの日常に戻る。辛いことや困難にぶつかることもあるだろう。

 しかし。幼い日を思い出したいとき。家庭に不和が訪れたとき。キティになって歓声をあげたいとき。作品を考察したいとき。怒りをおさえたいとき。そして、DREAM!ingが好きだと思うとき。いつでも壁Tがそばに居て、寄り添ってくれる。これからの人生で、こんなに心強いことはない。

 ありがとうDREAM!ing。ありがとうRainy Days。これからも私は壁Tを着ます。またたくさんの壁に出会える機会がありますように!

 

 

 

Dミュ初日の思い出

2022年7月8日。この日はミュージカル「DREAM!ing〜Rainy Days〜」(RD)の公演初日である。私はステラボール前の坂をゼエハア言いながら登り、坂があるなんて知らなかったよつれえよと唱えながら劇場を目指していた……


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第一弾の2021年1月。東京公演のチケットを取っていたが、緊急事態宣言が発令され、私はやむなく観劇を断念した。身近に高齢の親戚がおり、とても観劇に出掛けるとは当時言い出せなかったのだ。断腸の思いであったが、千秋楽が配信され、私はそちらで素晴らしい舞台を見ることができた。

第二弾の上演が決まり、今度こそ現地で観劇したい。解禁される情報に胸は高鳴り、メインビジュアルを見つめる日々が続いた。

初日は金曜。見たいが仕事の日だ。無念。翌日の土曜昼公演のチケットを取り、今か今かと待ち侘びて過ごした。

公演も近づいてきたある日、私は出演俳優さんの対談動画を楽しく見ていた。すると第一弾の時、(席は売れているはずなのに)空席があって、舞台上から見えていて…というお話をされていて、私は大きな衝撃を受けた。私の席だと直感的に思った。………もちろんあの時は観劇に行けなかった人がたくさんいて、その席は私の席ではないのだろうけど。私たちが苦しかったように、俳優さんたちも苦しかったのだ。私は行けなかった自分ばかり可哀想で、何も分かっていなかった。

もうこんな思いはしたくない、させたくない。悔いのないように、行ける範囲で劇場に足を運びたい。調べればまだ初日のチケットが買えそうだ。金曜夜…。

私事だが小さな自営業を営んでおり、平日の金曜日は盆と正月以外、何年も必ず仕事をしてきた。しかし………今、人生で、何を差し置いても劇場へ行きたい。

もしも、もしも、初日のみ公演が行われて、その後何かあったら。私や家族の身に何かあったら。行かなかったことを絶対後悔する。

仕事を休む準備に取り掛かる。手紙を作成し、メールを送信し、8日金曜日はお休みです!!!!と会うたびにアピールする。特に何の混乱もなく、何も聞かれることもなく、準備は整った。


初めて仕事を休んで出掛ける金曜日。寝付けなかった上、早起きをしてしまい、コンディションに少々不安がある。

事前に買った5枚の壁Tシャツを並べ、その中から一枚を迷うことなく手に取り、身に纏う。クリーム色(といいつつ現物はからし色みたいだが)に翡翠色の瞳。いつも真っ直ぐなその瞳に射抜かれてきたが、今日は私がその瞳を胸に壁となり馳せ参じるのだ。倒錯する世界。なんという非現実。


18:30公演だというのに16時には品川駅に着く。駅構内でなんか洒落れたレモンパスタみたいなものを食し、気持ちを落ち着かせる。ステラボールの近くにセリアがあり、そこでスリーブやケースを買う。普段定住しているジャンルにはない、久々のランダム要素に身構え、戦闘準備だ。


いざステラボールへ。私にとって初めての劇場だ。いつもイベントに行く際はこの人もいくのかな…という人に後を追うという横着をしているのだが(そして時々全然違う場所へ行く)、今回は100%確定壁が存在しているので安心してついていく。途中思いの外坂道で、ヒイ…ゼエハア…と辛い思いをする。お腹はタプタプだし寝不足だしフラフラだ。坂の結構上まで登り、入場待機列に並ぶ。チケット持った。裏面書いた。よしオッケー。

開場。並んでグッズを買い、座席を確認し、席につく。段差!!!段差がある!!!後列だが見やすく、全く問題ない。ヤッター!!

オペラグラスを首から下げ、舞台のセットでピントを合わせる。ハンカチを握りしめ、その時を、待った。


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本当に生きていて良かったです。DREAM!ingの、東雲特進生たちの青春がこれでもかと存在していました。私が大好きな、ペアを見つめるその眼差しを、生身の役者さんが一切の妥協なく演じてくれて、ああ、これが見たかったんだ、と震えました。脚本、役者、音楽、舞台セットと、全てが組み合わさり、私の人生最高の舞台を見させていただきました。願わくば、ビアンキ由仁の瞳にも、いつかペアの姿が映りますように。

本当に最高の「ゆめ」でした。ゆめで会えたこのことを糧に、これからの日々を、現実を、向き合って生きていこうと思います。

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あまりにも見終わった後に魂が抜けてしまい、しばらく動くことが出来なかった。規制退場が最後で良かったと思う。

本当に魂が抜けてしまい、どのくらいかというと、退場後にサブバッグに入れていたはずの歌舞伎揚がないことに気づき、劇場スタッフの方に座席番号を伝え見に行ってもらったのだが、歌舞伎揚どころかグッズのケースもオペラのケースも全部置いてきていた。サブバッグを下から持ち上げて中身をばら撒いてきたのか?記憶がない。劇場スタッフ様、ご迷惑をおかけしました。お忙しいときに確認ありがとうございました。

終演後、お慕いしている方と会い、品川のマックで感想を語り合う。その際にも私はグッズのケースを派手に落としてしまうという失態を演じ、ずっとアワアワフワフワしていた。しかし、作品についてたくさんお話することができて、本当に幸せな時間を過ごした。アカウントを作って、勇気を出して本当に良かった。

帰り道、十分終電に間に合う時間だったのだが、あまりにフラフラと歩いていたために地下鉄への乗り換えを逃し、東京駅からタクシーで帰宅した。酒を一滴も飲まずに終電を逃したのは人生初の経験だ。まだまだ人生には予想外の新しい経験がたくさんある。

私は4ヶ月前に突然ジャンルに戻った人間なのだが、新しい出会い、たくさんの忘れられない出会いがあった。これからも夏の雨とともに、ずっとずっとRDのことを思い出すだろう。


どうかその時も、そばにDREAM!ingと、胸を熱くさせる新しい展開がありますように。





超展開〜ついにリアルイベントに行ったお母さんの話

 


 以前ハマっていたコンテンツに出戻りし、初めて参加したオンリーオンラインイベントから一ヶ月。私は毎日楽しく、元気に、快活に暮らしていた。空は青いし、ご飯は美味しい。飼っているセキセイインコも元気に歌うし、一度枯れた鉢植えからは花が咲いた。本当にDREAM!ingは健康に良い。国民みんな読んで欲しい。

 来月には新作ミュージカルを控えている。役者さんたちのお稽古の情報にウキウキし、情報は更新されていないかと数分おきに検索する日々。ハッピー!!!

 毎日楽しく暮らしているある日、コンテンツの同人誌イベントの気配を察知する。私はさっぱり二次創作系のイベントのことが分からないのだが、何やら様々なコンテンツ合同で行われるようだ。

 楽しそうなお品書き。サンプルを拝見したが超高クオリティ、作品に対する愛、勝手ながら私と解釈一致の神作品ではないか。しかも私の運命を変えた神絵師様が表紙を担当なさっている。神の神本だ。

 これが製本されて販売されるという。えー欲しい!!!!

 6月の日曜日の午後、販売されるらしいではないか。ぜひ買いに行きたい。

 しかし行っていいものだろうか。私などどこの馬の骨か分からぬ人物だ。驚かせてしまうかもしれない。あとコンテンツファンの中でもかなりの年長者であろう。自分よりも年上の声優さんも参加されている作品に関わる身で、私BBAだからなどと自嘲する気もないが、まあ結構年上であることには変わりない。落ち着いて、通販をやってくださることを祈るのが吉か……。


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 逡巡している間に当日となった。

 今日はこれから子を連れてイオンにでも行くか、などと呑気に昼飯を食べながらスマホを見る。イベント開始のお知らせのTwitterが流れてきて、実際の本が並べられている設営のお写真を見た瞬間、私の体に衝撃が走った。

 私には作品に関して何かを生み出す力が無い。全くその才能が無いのだ。しかし作品を生み出す労力などは、少しだけれど想像がつく。そして、作品は、手にとってもらうことが大事だということも。

 そんな風に生み出された作品を、 傍観していていいのか。私は東京の最果て住みだが、頑張れば1時間程度で行ける距離だ。時計を見ると12時30分。何とか…なるのではないか…!?いや、お前がなんとかするんだよ!!!!

 今日は私にとって重要な日なのだと夫に告げ、子を任せ、取るものもとりあえず家を出た。イベントには差し入れがあると何だか良さそうなので、家の近所のケーキ屋で、地元の名物である金魚のお菓子を買う。私の推しキャラには金魚にまつわるエピソードがあり、フフ…と思いながら急いで会計を済ます。

 途中乗り換えの秋葉原駅に向かう地上で雨に降られ、若干湿りながら会場を目指す。東京流通センター。浜松町からモノレールに乗り換える。

 十数年前、就職活動で乗った以来だ。その会社には落ち、悲しい記憶を思い出したが、今はドキドキで胸がいっぱいだ。こんな気持ちでモノレールに再び乗れる日が来ようとは。長生きもするものである。

 いざ会場へ。人生で初めての即売会イベント会場だ。こんな雰囲気なのか〜!!!机があって人がいて、作品が並べられていて、様々なジャンルが見受けられる。

 キョロキョロしながらも、なんとか目的地に辿り着いた。湿った女で申し訳ないと思いつつ神作家様(以下神)にご挨拶し、神本を売ってもらう。神はとても優しく、何故かただの客の私に素敵なお土産をくださったり気を遣って頂いた。湿った年増の私にあまりにも親切で泣きそうになる。本当にありがとうございます。

 そして実物の本を手にして、私はとても嬉しかった。この為に来たのだ。本当はずっと手に抱えて帰りたかったのだが、持参したエコバッグにしまうことにする。

 少しお話でも出来れば、とソワソワしていると、なんと神絵師様もいらしているというではないか。いや無理。私は神絵師様のファンなのだ。言葉を交わしている場合では無い。

  アイドルの握手会に参加したファンが、その後アイドルと個人的に会いませんか、と言われたら、断るのがファンの鑑だ。私だって普段は宝塚ファンとして暮らしているが、彼女たちのプライベートに興味はない。万が一お見かけしても、決して近付かず、話しかけることなどもっての他だ。

 それなのに私は図々しくも、神絵師様にご挨拶させていただくことにした。自分の欲には正直なのだ。

 そして、神と神絵師様と湿った私の三者が揃った。神も神絵師様も非常にお若く可愛らしく、オタクじゃねえじゃん!!!と思いながら、普段の感謝をお伝えする。(した気がする。記憶がない)

 そして名残惜しく帰ろうとしない私をアフター(合ってますか?)に誘って下さったのだ!!

 この文章を書いている今なら、神作家様と神絵師様(お二人は本の関係者)とただの買い物客の私の三者の談合などおかしいとしか言いようが無いのだが、なんだか家を出てからずっと冷静さを欠いており、また図々しくもノコノコ参加させて頂いた次第である。

 お話させて頂いた内容は胸に秘めておくが、ほんとーーーーにドリーミングっぽい会談であった。終始、これから新作ミュージカルが上演されるコンテンツとは思えない程のテンションだ。「なぜ…アニメ化しないのか…」とため息と共にキャラクターの考察をお聞きすることができ、私は本当に楽しかったです!!!私はゆめを叶えるために頑張ります!!!(富豪になり映画館を貸し切りずっとドリーミングを流して壁と一緒に無言で見る)

  

 ミュージカルも終わり、いつかコンテンツも動かなくなる時が来るかもしれない。でも私はずっと作品が好きだし、今の楽しいこの日々を思い出しながら、生きていくのだと思う。

 少なくともモノレールは楽しい思い出になったし、神本は素晴らしかったし、最近子が家探しをしてくるので、鍵付きの金庫を購入しようとAmazonで検索したり忙しい。とりあえず今日もハッピー!!!


人生初のオンリーオンラインイベントに参加したお母さんの話

 



 表題のお母さんとは私のことである。私は既婚で子育て中だ。どこにでもいる、平凡な普通のお母さんをしている。
 
趣味は宝塚観劇とゲーム。ゲームはほぼコンシューマーしかしない。ソシャゲはいくつかインストールするものの、用事で1日でもログイン出来ずにいると、もう億劫になってしまい触らなくなってしまう、そんなタイプだ。

 2018年、好きな乙女ゲームに出ていた声優さんがメインキャラのアプリをプレイしてみた。最初は私好みのショタが実装されてねえなと文句を言いつつ、軽い気持ちで始めてみたが、ストーリーがあまりにも自分好みで、私のために書かれたの?????と思いながらどんどん話に夢中になっていった。エンタメであり、文学的であり、少年たちの成長を描く、青春物語だ。

 アプリゲームが続いたことのない私が、毎日ログインし、16時の更新を日々楽しみにしていた。生まれて初めてソシャゲイベントを本気で走った。正月には義実家で隙をついてマメに起動し、おもちとおせちを死ぬほど集めるというゲーム内謎作業を必死で行っていた。

 コラボカフェに何度も行き、リアルイベントの為に人生初の埼玉県春日部市に降り立ち、サイン入りポスターを求めて同じ商品を何個も買い、キャラクターの顔面のおまんじゅうをキャラグッズの牛乳ビンポーチに入れ連れ回していた。

 毎日楽しく暮らしていたが、コロナがいよいよ猛威を奮い始め、緊急事態宣言が出る直前の3月30日、アプリの更新停止が告げられた。前日までショップでイベントが開催され、当日も特番が組まれていた中、本当にショックであった。今でも思い出すと指先が冷たくなる。

 その後も作品の展開は続き、運営の誠意をこれ以上ないほど感じていたが、悲しみの方が何百倍も大きくて、私はそれを乗り越えられなかった。情報を追う機会が減り、いつしかあんなに大好きだったコンテンツから離れてしまった。
 その心の穴を埋めるように、元から嗜んでいた宝塚歌劇団若い女の子に溺れ、熱狂的に応援するようになっていったーーーー

 時は流れて2022年。
 楽しく宝塚歌劇のファンをしていたが、年明けから東京兵庫愛知と、相次いでコロナによる公演中止の事態となった。舞台人として公演が出来ないことは何よりも悔しいだろう。責任を感じて泣いている子もいるかもしれない。コロナへの怒りと悲しみで、瞬く間に自分のメンタルも崩してしまった。
 今までずっと我慢してきたのにまだこんなに苦しいの、もう将来に不安しかないよ…ちょっと生きる気持ちが湧いてこず、しんどい日々が続いた。

 そんな折、とある神絵師様のバズりツイートの壁に顔面のアイコン(コンテンツの象徴である)、ツリーから、離れたアプリゲームのことを思い出す。そうか、サービス終了して随分経つなあ、メインストーリー完結したのか。結局読んでないなあ。どうなったんだろう。
 ここで思い出したことも何かの縁。ちょっくら読んでみっか。

………………

  なんということだ。私が大好きだったキャラクター達、見たかった展開、なにもかもがそこにあった。人が人と関わって、誰にも見せなかった本音を引き出し、あるいは曝け出して生きることを描いたストーリーに、私は呆然とするしかない。
 正直、この日を境に生まれ変わった感覚すらある。私はこの完結を見届けずに死ぬところだったのか。危ないところだった。完結まで見てこそ、今までの全てがつながり、また、続いていく彼らの人生を思い描くことができる。この物語に出会えた人生に感謝。私は生きる力を取り戻したのだ!!

 最新の情報を検索する。まず推しを演じていた声優さんが引退されており、あまりのショックに咽び泣いた。推しの可愛いイラストを描いてくれたり愛に溢れた方だった。どうかお元気でいらっしゃいますように。

 検索を続ける。私が三次元の生身の若い女の子にうつつを抜かしている間、まだまだみんな作品が好きで、ジャンルで活動している人がいて、オンリーイベントなども開かれる予定ではないか。私はそこそこ長くオタクみたいなことをしているが、同人誌即売会に行ったことがない。そちらの方面には疎いのだ。

 しかし、今の私は違う。体中の細胞という細胞が、あらゆる供給を求めている。まだまだコロナ禍で子育て中という自分の環境で、オンラインで購入したり交流できたりという仕組みは、有り難すぎて夢のようだ。是非とも一般人として参加してみたい!!!

 大変な時勢の中、また多くのコンテンツが山ほどある中、主催の方や出展してくださる方々に感謝のいいね!を送る日々が続いた。

 生まれて初めて参加するイベント、緊張する。何も作法が分からない。実際の会場であれば、手ぶくろを買いに来た子ギツネのように見よう見まねで現金さえ支払えばお品物を売ってくれそうだが、オンライン開催だ。粗相があったらどうしよう。

 分からなければ調べよう。主催様が大変親切で、参加方法から注意事項まで細かく導いてくれている。パンフレットが事前にダウンロードできたので、早速印刷して隅々まで見る。人生初の同人誌即売会イベントパンフレットだ。嬉しくてずっと手元に置き、枕元に置いて寝た。

 いよいよ当日。5月5日、こどもの日の開催だ。操作に慣れず20回は即退場を繰り返す。なんとかあっちこっちに出かけ、お宝を手に入れていく。隙間時間でのログインなので、怪しい動きをしては消えてしまい申し訳ない。

 一方現実世界では男児を育成中なので、鯉のぼりを鑑賞し、かしわ餅やちまきを食べ、子と5月5日が誕生日の人物の健やかな成長と幸せを祈った。

 そして家族が寝静まった夜ーーーー
 ついに私の時間だ。お母さんから一人の人間に戻る時がきた。平時であれば参加出来なかったであろうイベントに、オンラインだからこそ参加できる奇跡。家から優雅にたくさんのイラストや漫画や小説が見られるのだ!同人誌が、グッズが買えるのだ!!
 悔いのないように情報を精査し、ゆっくりと展示を見ていく。すると、重大な事態に気が付いた。
 
今日23時限りのネットプリントがあるーーーーー
 
 完全に油断していた。もう時間がない。

 行くしかないーーーーーーー
 
 入浴を面倒で後回しにしておいて良かった。推しが可愛らしく描かれたネットプリントを手に入れる為、ファブルになった私は夜の街を自転車でコンビニまで駆けていく。
 辿々しい指で端末を操作する。先ほどまで白紙だったものが、私の行動により推しが印刷された、私だけのために生み出された宝物に変わるのだ!!イリュージョン!!他にもたくさんプリントし、束を大事に鞄にしまった。
 普段訪れることがない、駅の反対側の古いローソン。ここが私のリアルイベント会場だ。即売会に参加した人は、お宝を大事に抱えて家に帰るという。私もその気持ちが分かった。とても幸せだ。

 本当に幸せな1日だった。たくさんのイラスト、小説、グッズを見て、作品の新たな魅力や、作者様方のお人柄にも触れ、私の知らない世界がたくさん広がった。明日は仕事だ。今日のエネルギーを生きる力に転換し、また日々の生活を頑張っていく決意をした。

 イベントは終了したが、オンラインで購入したものは今後徐々に届く。まだまだこれからが本番ともいえよう。新作ミュージカルも予定されており、忙しい日々は続く。本当に出戻って良かった。イベント主催の方、関わってくださった方々、本当にありがとうございました。出来る限りたくさん見たり買ったりしました。私はなんの才能もない凡人ですが、これからも開催の折には一般人として参加させていただく所存でございます。

 あーあ、DREAM!ingに出会えて良かったな!!!!